2026年3月29日
イラン戦争停戦後を考える - 注目したい3つのセクター

2026年3月30日現在、イラン戦争は開戦から約1カ月が経過しました。ホルムズ海峡は実質的に閉ざされたままで、ブレント原油は一時119ドル超まで急騰。IEAは史上最大となる4億バレルの緊急備蓄放出に踏み切りました。トランプ大統領はイランのエネルギー施設への攻撃猶予期限を4月6日まで延長しましたが、イラン側は米提案を『一方的で不公正』と批判し、少なくとも表立った直接交渉は確認されていない状況です。
「停戦は近い」と楽観できる状況ではなく、市場は出口への期待と最悪シナリオへの警戒の間で揺れ続けています。
ただ、停戦がいつ来るかはわからなくても、「停戦したら何が起こるか」を考えておくことには意味があります。
そこで本記事では、停戦後に注目されやすいセクターを3つに絞って整理していきます。
戦後に実需が発生しやすいエネルギー復旧、停戦の瞬間に反発しやすい旅行・レジャー、そして停戦後もテーマが残りやすい防衛の3つです。
なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。さらに、特定の政治的思想や戦争を肯定するものでもありません。投資判断についてはご自身の判断と責任でお願いいたします。
エネルギー復旧 - 停戦後に最も確実に「仕事」が発生するセクター
現在世界が中が息を呑んで注目しているエネルギー供給問題。現在のホルムズ海峡問題だけでなく、現地のエネルギー設備被害も甚大です。そのため、戦争が終わった後のエネルギーを復旧する企業に注目が集まります。
IEA(国際エネルギー機関)のビロル事務局長は3月23日、中東9カ国で少なくとも40以上のエネルギー資産が深刻な損傷を受けたとし、この危機は1970年代の二度のオイルショックを上回り、ガス市場への影響もロシア・ウクライナ戦争を上回ると警告しました。ノルウェーのエネルギー調査会社リスタッドエナジー(Rystad Energy)は、復旧コストが少なくとも250億ドルに達すると推計しています。
しかも、お金さえあれば解決する話ではありません。たとえばカタールのラスラファン工業都市では、LNG設備の破壊によって生産能力が17%減少していますが、復旧に必要な大型ガスタービンを作れるメーカーは世界にわずか3社。
しかもどこも2〜4年の受注残を抱えています。リスタッドエナジーの見立てでは、完全復旧には最大5年かかる可能性があるとのことです。つまり、停戦はゴールではなく、長い復旧の始まりなのです。
https://financialpost.com/news/gulf-oil-gas-producers-face-25-billion-repair-bill#:~:text=Posthaste:%20Middle%20East%20oil%20faces,%2C%20Gabriel%20Friedman%2C%20and%20others.
こうした復旧需要の受け皿として名前が挙がっているのが、油田サービス大手のSLB(SLB)やハリバートン(HAL)、ベーカー・ヒューズ(BKR)などです。いずれも油田の調査・掘削・保守に強みを持ち、中東での実績も豊富です。


石油メジャーでは、エクソンモービル(XOM)が中東でオペレーションを展開しており、生産・輸出能力の回復局面で存在感を高めています。
ただし一点、留意すべきことがあります。イラン国内の復旧については、制裁の影響で西側企業がアクセスしにくく、イラン国内の企業や中国系企業が主な受注先になる可能性が高いとRystad Energyは指摘しています。復旧の恩恵がどこに流れるかは、技術力だけでなく政治的な力学にも左右されるということです。
再建・建築セクター
さらに、壊れた街そのものの再建にも注目です。停戦後は、油田やLNG設備だけでなく、道路や橋、送電網、住宅など都市インフラ全体の復旧も進みます。
世界銀行は、ウクライナの復興コストが今後10年で5,880億ドルに達すると試算しています。こうした文脈で注目されやすいのが建機大手のCaterpillar(CAT)です。2025年売上高676億ドル、190カ国超のネットワークを持つ同社は、戦後の再建を考えるうえで見ておきたい銘柄のひとつです。

旅行・レジャー:停戦時の反発
2つ目は旅行・レジャーです。このセクターは、原油高と地政学リスクで大きな痛手を負っています。
実際、3月25日にトランプ大統領がイランとの交渉進展を示唆した際、欧州STOXX600の旅行・レジャーセクターは1.4%上昇しました。
ところが3月29日にはフーシ派のイスラエル攻撃や米軍増派の報道を受けて湾岸市場が下落。ニュースひとつで激しく上下する展開が続いています。
個別銘柄で最も注目度が高いのは、世界最大級のクルーズ会社カーニバル(CCL)です。
同社は3月28日の決算で、燃料費急騰を受けて通期EPSを約2.48ドルから約2.21ドルに引き下げました。5億ドル超の燃料コスト増が見込まれ、株価は直近30日で約17%下落しています。
しかし、需要そのものは崩れていません。2026年の予約は二桁増で過去最高水準にあり、顧客デポジットは四半期として最高の約80億ドルに達しています。業績悪化の原因が「需要の消失」ではなく「一時的な外部コストの急騰」である以上、その外部要因が解消すれば反発余地は大きいと考えるのが自然です。
格安航空のサウスウエスト・エアラインズ(LUV)も興味深い存在です。

同社は2025年に燃料ヘッジプログラムを終了しており、米国の主要航空会社として最後のヘッジ実施者でした。このため、原油高の影響をダイレクトに受けています。
防衛:停戦しても終わらないテーマ
3つ目は防衛関連です。
このセクターの見方でありがちな誤解は、「停戦すれば防衛株は売られる」というものです。しかし実態を見ると、防衛支出の拡大は今回の戦争に始まったものではなく、停戦で急に止まるような性質のものでもありません。
NATOのルッテ事務総長は3月26日に発表した年次報告で、欧州加盟国とカナダの2025年の防衛支出が前年比で実質20%増の5,740億ドルに達したことを明らかにしました。
https://www.reuters.com/world/americas/nato-sees-sharp-increase-europes-canadas-defence-spending-2026-03-26/?utm_source=chatgpt.com
一方、NATO全体で見ると2025年の防衛支出はGDP比2.77%に達し、2035年までに5%を目指す新たな合意も成立しています。ロシア・ウクライナ戦争を機に強まった再軍備の流れは、停戦が来てもすぐには止まりそうにありません。
そしてもうひとつ重要な変化は、防衛のテーマが「ミサイルと戦闘機」の世界から、「AIとソフトウェア」の世界にも広がっていることです。その象徴がパランティア・テクノロジーズ(PLTR)です。
同社は2025年10-12月期決算で米政府向け売上が前年同期比66%増の5.7億ドルを記録。さらに3月24日には、トランプ政権が推進する1,850億ドル規模のミサイル防衛構想「Golden Dome」のソフトウェア開発にAndurilとともに参画していることが報じられました。
米国防総省は同社のMaven AIシステムを戦場指揮統制の正式プログラム(program of record)とする方針が示されており、今年度末までに発効する見込みです。
伝統的な防衛大手では、ロッキード・マーチン(LMT)、RTX(RTX)、ノースロップ・グラマン(NOC)がGolden Dome(トランプ政権が推進する最新鋭のミサイル防衛システム)の主要請負企業に名を連ねています。


防衛関連は、旅行株のような短期の反発力は期待しにくい一方で、停戦後も予算と需要が構造的に残りやすいという強みがあります。
予測ができないが、考えられることはある
停戦が「いつ」来るかは、3月30日現在時点では誰にもわかりません。トランプ大統領が設定した4月6日の期限がどう動くか、イランが歩み寄るのか、それともさらにエスカレートするのか。予測は困難です。
しかし、「停戦後に何が起こるか」ということに関しては、最低限起こることは予測が可能です。
壊れたインフラの修復が始まるエネルギー復旧。原油安と消費マインド回復の恩恵を受ける旅行・レジャー。そして停戦後も各国の予算に支えられ続ける防衛。
この3つのセクターに絞って考えることで、現在の混乱相場も耐えることができるのではないでしょうか。
なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。さらに、特定の政治的思想や戦争を肯定するものでもありません。投資判断についてはご自身の判断と責任でお願いいたします。
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