2026年8月9日
米国株の特定口座と一般口座の違い|税務上の扱い
米国株の取引を始めるとき、多くの方が「特定口座と一般口座、どちらを選べばいいのか」という疑問を持ちます。
この選択は、確定申告の手間や税金の計算方法に直結するため、口座を開設する前にしっかり理解しておくことが重要です。本記事では、特定口座と一般口座の違いを税務上の観点から丁寧に解説します。
この記事のポイント
- 特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと、原則として確定申告が不要になる
- 特定口座(源泉徴収なし)は年間取引報告書を使って簡便に申告できる「簡易申告口座」
- 損益通算や繰越控除を活用したい場合は、確定申告が必要になる
特定口座と一般口座の違いとは
米国株を含む上場株式等を取引できる証券口座には、大きく分けて「特定口座」と「一般口座」の2種類があります
最も大きな違いは、税金の計算と納税手続きを誰が行うかという点です。
口座の種類 | 譲渡損益の計算 | 確定申告 |
|---|---|---|
特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が計算・源泉徴収 | 原則不要 |
特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が計算 | 投資家自身が申告(年間取引報告書を利用) |
一般口座 | 投資家自身が計算 | 投資家自身が申告 |
特定口座制度は、投資家の税務手続きを簡便にするために設けられた制度です。証券会社が1年間の取引を集計し、特定口座年間取引報告書を作成・送付します(出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」、令和6年4月1日現在法令等)。
一方、一般口座では、投資家自身がすべての取引記録を管理し、譲渡益を計算したうえで確定申告を行う必要があります。
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特定口座(源泉徴収あり)の仕組みと確定申告が不要になる理由
特定口座(源泉徴収あり)の最大のメリットは、確定申告が原則不要になる点です。
特定口座内で生じる所得に対して源泉徴収することを選択することにより、その特定口座内における上場株式等の譲渡による所得を申告不要とすることができます(出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」、令和5年4月1日現在法令等)。
株式等の譲渡益に適用される税率は、申告分離課税として合計20.315%です。内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%となります(出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」、令和7年4月1日現在法令等)。
特定口座(源泉徴収あり)では、この20.315%の税額が自動的に源泉徴収・特別徴収されることで課税関係が終了します。確定申告の手間を省きたい方にとって、大きな利点です。
また、特定口座(源泉徴収あり)に上場株式等の配当等を受け入れた場合、口座内で生じた譲渡損失の金額があるときは、配当等の金額からその譲渡損失の金額を控除(損益通算)した金額を基に源泉徴収税額が計算されます(出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」、令和5年4月1日現在法令等)。つまり、同一口座内での損益通算は自動で行われます。
特定口座(源泉徴収なし)の仕組みと確定申告の方法
特定口座(源泉徴収なし)は「簡易申告口座」とも呼ばれます
源泉徴収は行われないため、投資家自身が確定申告を行う必要があります。ただし、証券会社から交付される特定口座年間取引報告書を利用することで、簡便に申告を行うことができます(出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」、令和5年4月1日現在法令等)。
確定申告の手間は一般口座より少ないものの、毎年の申告作業は発生します。給与所得以外の所得が一定額を超える方や、複数の口座を持つ方には、この選択が合う場合があります。
一般口座の特徴と管理の手間
一般口座は、特定口座制度の対象外となる口座です。
最大の特徴は、投資家自身がすべての取引を管理し、譲渡益を計算しなければならない点にあります。証券会社は年間取引報告書を作成しないため、取引履歴をもとに自分で計算して確定申告を行う必要があります。
売却のたびに取得価額や手数料を記録し、年間の損益をまとめる作業は相応の手間がかかります。現在では特定口座が広く利用されているため、一般口座をあえて選ぶケースは限られています。
損益通算と繰越控除|確定申告が必要になるケース
特定口座(源泉徴収あり)を選んでいても、確定申告を行うことで税金を取り戻せる(還付を受けられる)場合があります。
損益通算
上場株式等を売却して生じた損失の金額は、確定申告により、その年分の上場株式等の利子等・配当等と損益通算することができます(出典:国税庁「株式・配当・利子と税」、令和7年4月1日現在法令等)。
たとえば、A口座で20万円の譲渡益が発生し、B口座で30万円の譲渡損失が発生した場合、確定申告によって損益を通算すると、課税対象となる利益はゼロとなり、A口座で源泉徴収された税額の還付を受けることができます。
繰越控除
損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等の譲渡益および配当等から繰越控除することができます(出典:国税庁「株式・配当・利子と税」、令和7年4月1日現在法令等)。
注意点
特定口座(源泉徴収あり)内で生じた損失について確定申告を行うことで他の口座の利益と損益通算することができますが、その場合は確定申告不要制度を適用できないため、その口座分の確定申告が必要となります(出典:国税庁「特定口座(源泉徴収あり)とは」、令和2年4月1日現在法令等)。
また、申告するかどうかは口座ごとに選択できます。1回の譲渡ごとや1回に支払を受ける配当等ごとの選択はできません(出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」、令和5年4月1日現在法令等)。
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損益通算・繰越控除の計算例
損益通算と繰越控除の効果を、具体的な数値で確認します。
前提
- A口座(特定口座・源泉徴収あり):譲渡益 50万円
- B口座(特定口座・源泉徴収あり):譲渡損失 80万円
- 税率:20.315%
計算の流れ
ステップ | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
A口座で源泉徴収された税額 | 50万円 × 20.315% | 101,575円 |
損益通算後の課税対象額 | 50万円 − 80万円 | −30万円(損失) |
当年の還付額 | 課税対象がゼロのため全額還付 | 101,575円 |
翌年以後に繰り越せる損失 | 通算後の残余損失 | 30万円(最長3年繰越可) |
この例では、確定申告を行うことで101,575円の還付を受けられるうえ、残余損失30万円を翌年以後3年間の繰越控除に活用できます。
配当金の税務と二重課税の問題
米国株の配当金には、米国側と日本側の双方で課税される場合があります。これが二重課税の問題です。
上場株式等の配当等に係る申告分離課税の税率は所得税15%であり、所得税のほかに復興特別所得税0.315%復興特別所得税がかかります。住民税は5%です(出典:国税庁「株式・配当・利子と税」、令和7年4月1日現在法令等)。
日本の居住者が外国で課税された所得税額については、確定申告により外国税額控除を適用することで、二重課税を一定程度緩和できる場合があります。
ただし、NISA口座(非課税口座内上場株式等)の配当等に対して課される外国所得税額は、外国税額控除の対象外とされています(出典:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」、令和7年4月1日現在法令等)。
また、上場株式等の配当等に係る申告分離課税を選択した場合、上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合またはその年の前年以前3年内の各年に生じた繰越損失がある場合には、一定の要件の下、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等の金額から控除することができます(出典:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」、令和7年4月1日現在法令等)。
特定口座と一般口座の選び方|確定申告の要否で考える
口座の選び方は、確定申告の手間をどこまで省きたいかと、損益通算・繰越控除を活用したいかによって変わります。
確定申告の手間を最小化したい場合
特定口座(源泉徴収あり)が適しています。証券会社が税金の計算と納税を代行するため、原則として確定申告は不要です。取引が1つの口座に集中していて、損失の繰越控除も不要であれば、この選択が最もシンプルです。
損益通算・繰越控除を積極的に活用したい場合
複数の口座をまたいで損益通算したい場合や、損失を翌年以後に繰り越したい場合は、確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)であっても、確定申告を行うことで還付を受けることができます。
確定申告に慣れている・給与所得以外の所得が一定額以下の場合
特定口座(源泉徴収なし)を選ぶと、年間取引報告書を活用して簡便に申告できます。源泉徴収が行われないため、利益が出た年は自分で納税する必要がある点に注意してください。
まとめ
特定口座と一般口座の最大の違いは、税金の計算と確定申告の手続きを誰が担うかという点にあります。
特定口座(源泉徴収あり)は証券会社が計算・源泉徴収まで行うため、原則として確定申告が不要です。特定口座(源泉徴収なし)は年間取引報告書を活用して簡便に申告できる「簡易申告口座」です。一般口座はすべて自身で管理・計算・申告する必要があります。
損益通算や繰越控除を活用したい場合は、特定口座(源泉徴収あり)であっても確定申告を行うことで還付を受けられます。自分の投資スタイルや確定申告への対応力に合わせて、最適な口座の選び方を検討してください。
税務に関するご判断は税理士等の専門家にご相談ください。最新の税制度については国税庁(https://www.nta.go.jp)をご確認ください。
よくある質問
Q1. 特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと、確定申告は一切不要ですか?
原則として確定申告は不要です。ただし、複数の口座間で損益通算を行いたい場合や、損失を翌年以後に繰り越したい場合は確定申告が必要になります。その場合、その口座分については確定申告不要制度を適用できなくなります(出典:国税庁「特定口座(源泉徴収あり)とは」)。
Q2. 特定口座と一般口座は途中で変更できますか?
口座の種類の変更は、金融機関によって対応が異なります。詳細はご利用の証券会社にご確認ください。
Q3. 損失が出た年に確定申告しないと、繰越控除は使えませんか?
損失の繰越控除を利用するには、損失が発生した年に確定申告を行うことが必要です。申告をしなかった年の損失は繰り越すことができません。翌年以後3年間の繰越控除を活用したい場合は、損失が発生した年から確定申告を行ってください(出典:国税庁「株式・配当・利子と税」)。
Q4. 特定口座(源泉徴収あり)で配当金も受け取った場合、自動で損益通算されますか?
特定口座(源泉徴収あり)に上場株式等の配当等を受け入れた場合、同一口座内の譲渡損失と自動で損益通算され、その結果を基に源泉徴収税額が計算されます(出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」)。
Q5. NISA口座で受け取った米国株の配当金にかかる米国税は、外国税額控除の対象になりますか?
NISA口座(非課税口座内上場株式等)の配当等に対して課される外国所得税額は、外国税額控除の対象外とされています(出典:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」)。
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