2026年7月27日
米国株のIOC・FOKなど高度な注文タイプ
米国株の取引を続けていると、「IOC」「FOK」「GTC」といった略語に出会うことがあります。
これらは執行条件と呼ばれる注文の付加条件で、発注後に注文がどう処理されるかを細かくコントロールするための仕組みです。成行注文や指値注文といった基本的な注文方法を理解したうえで、さらに一段上の知識として押さえておくと、取引の意図をより正確に市場に伝えられるようになります。
この記事のポイント
- IOC・FOK・FAKは「発注後に残った数量をどう扱うか」を指定する執行条件
- GTC・GFD・GTDは「注文をいつまで有効にするか」を指定する有効期間条件
- 執行条件はHFT(高速取引)の現場でも制度的に重要な役割を担っている
IOC注文とは何か|執行条件の基本を理解する
IOC(Immediate or Cancel)とは、発注した瞬間に指定した価格かそれよりも有利な値段で、即座に全部または一部を約定させ、約定できなかった残りの数量を自動的にキャンセルする注文条件です(出典:日本取引所グループ「米国市場の複雑性とHFTを巡る議論」2014年7月)。
「今すぐ約定できる分だけ約定させ、残りは捨てる」というイメージです。
部分約定を許容する点が大きな特徴で、注文数量の一部だけが成立することもあります。板の薄い時間帯や、大口注文を少しずつ執行したい場面で使われることが多い注文方法です。
また、米国のRegulation NMS(Rule 611)のもとでは、自動気配を表示する取引市場はIOC注文を必ず実装しなければならないと定められており、IOC注文は米国株式市場の制度的インフラとして不可欠な存在となっています(出典:同上)。
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FOK注文とは何か|全数量か、ゼロか
FOK(Fill or Kill)は、発注した瞬間に全数量が即座に約定しない場合、注文全体をキャンセルする条件です(出典:日本取引所グループ「米国市場の複雑性とHFTを巡る議論」2014年7月)。
IOC注文が「部分約定あり」なのに対し、FOK注文は部分約定を一切許容しない点が根本的な違いです。
条件 | 部分約定 | 残数量の扱い |
|---|---|---|
IOC(Immediate or Cancel) | 許容する | 即時キャンセル |
FOK(Fill or Kill) | 許容しない | 全量キャンセル |
FAK(Fill and Kill) | 許容する | 即時失効 |
金融庁「高速取引行為の動向について」(2025年9月30日)では、FOKを「全数量が直ちに約定しない場合には、当該全数量を失効させる条件」と公式に定義しています。
FOK注文が有効なのは、「100株全部が指定した価格で約定しなければ意味がない」という場面です。たとえば、裁定取引や複数銘柄を同時に執行する戦略では、一部だけ成立すると全体のポジションが崩れてしまうため、FOKで全量成立を条件にすることがあります。
FAK注文とは何か|IOCとの違いを整理する
FAK(Fill and Kill)は、IOC注文とほぼ同義で使われることが多い用語です。
金融庁の定義では「指定した値段かそれよりも有利な値段で、即時に一部あるいは全数量を約定させ、成立しなかった注文数量を失効させる条件」とされています(出典:金融庁「高速取引行為の動向について」2025年9月30日)。
JPXの東京商品取引所の注文規則でも、約定条件として「FaK(Fill and Kill)=未約定数量が失効される条件」と「FoK(Fill or Kill)=全量約定しない場合に全部の数量が失効される条件」が明確に区別されて定められています(出典:JPX東京商品取引所「注文の種類等」)。
FOKとFAKはいずれも「発注後すぐに失効する」という意味でJPXのJ-GATE仕様書では「Bouncing(即時失効)」として同一カテゴリに分類されています(出典:JPX「オルタナティブデータ提供サービス(J-GATE)注文約定データ仕様書」)。
GTC・GFD・GTDとは|有効期間条件を理解する
IOCやFOKが「約定後の残数量をどう扱うか」を決める条件だとすれば、GTC・GFD・GTDは「注文をいつまで有効にするか」を決める有効期間条件です。
金融庁「高速取引行為の動向について」(2025年9月30日)に基づく定義は以下のとおりです。
略語 | 正式名称 | 有効期間 |
|---|---|---|
GFD | Good For Day | 当日の日中立会終了まで |
GTC | Good Till Cancel | 取り消すまで(取引最終日の日中立会終了まで) |
GTD | Good Till Date | 指定した日付の日中立会終了まで |
米国株式取引では、未約定の指値注文をどの時間まで有効にするかは取引戦略に直結します。
たとえば、寄付きの相場が動く前に指定した価格での約定を狙いたい場合はGFDが適しています。一方、数日にわたって特定の価格水準を待ちたい場合はGTCやGTDを選ぶことになります。引けにかけて相場が動く時間帯を狙う場合も、有効期間の設定が約定のタイミングを左右します。
寄付き・引けと執行条件の関係
米国株式取引では、寄付き(市場の開始直後)と引け(取引終了前後)は特に値動きが大きくなりやすい時間帯です。
この時間帯に執行条件を組み合わせることで、意図した価格での約定を狙いやすくなります。
- 寄付きに約定を狙う場合:指値注文にGFDを設定し、寄付きの相場で成立しなければ当日中に失効させる
- 引けに約定を狙う場合:プレクロージングの気配を確認しながら、指定した価格での発注後に残数量を残さないようIOCを使う選択肢もある
日本証券業協会「コンプライアンス・ハンドブック」(2026年4月)でも、外国証券の受注において確認すべき注文要素として「注文方法:成行、指値、場指定(寄付き、前引け、後場寄り、大引け)等」が明示されており、株式取引における注文方法の確認が重要とされています。
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IOC注文はHFTが主に使う|個人投資家との関係
IOC注文やFAK注文は、実務上はHFT(高速取引行為者)が主に活用する注文形態です。
金融庁の調査研究報告書「高速取引行為の特性分析」(2021年7月)によると、東証全体のIOC注文件数に占める登録HFT業者のIOC注文件数の割合は約8割超に達することが確認されています。
また、金融庁「高速取引行為の動向について」(2025年9月30日)によると、高速取引行為者の注文件数のうちFAK注文は足元で85%程度で推移しており、FAK注文件数全体に占めるHFT等のFAK注文比率は概ね100%で推移しています。
個人投資家が日常的にIOCやFOKを指定する場面は限られていますが、これらの条件が市場の流動性を支える仕組みとして機能していることは、株式取引の構造を理解するうえで重要な知識です。
Regulation NMSの動向|2026年の制度変化
IOC注文の制度的背景として、米国のRegulation NMS(レギュレーションNMS)があります。
2026年6月11日、SECはRegulation NMSのRule 611(注文保護・トレードスルー禁止規則)とRule 610(e)(ロックド・クロスト気配制限規則)の撤廃案を発表しました(出典:SEC プレスリリース 2026年6月11日)。
SECはこの変更によって市場参加者の年間コストを5,420万ドルから7,700万ドルの範囲で軽減できると試算しており、60日間のパブリックコメント期間を経て最終的な規則策定プロセスが進む予定です。
Rule 611はIOC注文の実装を自動気配表示市場に義務付けてきた規則です。この規則が撤廃された場合、IOC注文の制度的位置づけがどう変わるかは、今後の米国株式市場の取引環境に影響を与える可能性があります。現時点では撤廃案の段階であり、最終的な規則変更の内容はパブリックコメントを経て確定します。
まとめ
IOC・FOK・FAKは、発注後に残った数量をどう処理するかを決める執行条件です。
IOCは部分約定を許容しつつ残数量を即時キャンセル、FOKは全量約定しなければ全てキャンセル、FAKはIOCとほぼ同義で残数量を即時失効させます。GTC・GFD・GTDは注文の有効期間を指定する条件で、寄付きや引けの時間帯の取引戦略と組み合わせて使われます。
これらの執行条件は、HFTが主に活用する高度な注文方法ですが、米国株式市場の仕組みを理解するうえで欠かせない知識です。注文方法の選択肢を広く把握することで、自分の取引目的に合った発注ができるようになります。
米国株の取引環境を整えたい方は、Woodstockの取扱銘柄やお取引ページもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. IOCとFOKの一番の違いは何ですか?
A. 部分約定を許容するかどうかです。IOCは指定した価格で約定できた分だけ成立し、残りはキャンセルされます。FOKは全数量が即座に約定しない場合、注文全体がキャンセルされます。
Q. FAKとIOCは同じ意味ですか?
A. 実質的にほぼ同義です。どちらも「即時に約定できる分を約定させ、残数量を失効させる」条件を指します。JPXの仕様書ではFOKとFAKをまとめて「Bouncing(即時失効)」として分類しています。
Q. GTCとGFDはどう使い分けますか?
A. GFDは当日の取引時間内のみ有効な条件です。当日中に約定しなければ自動的に失効します。GTCは取り消すまで有効で、複数日にわたって特定の価格水準での約定を待ちたい場合に使います。
Q. 個人投資家がIOCやFOKを使う場面はありますか?
A. 日常的な取引では限られます。IOCやFOKはHFTが主に活用する注文形態であり、個人投資家が通常の指値注文や成行注文で取引する場合には、これらの執行条件を意識する機会は多くありません。ただし、証券会社のシステムによっては選択肢として提供されている場合があります。
Q. 国内証券でもIOC注文は使えますか?
A. 証券会社によって提供している注文方法は異なります。具体的な注文条件の対応状況は、各証券会社の公式サイトでご確認ください。
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