2026年9月15日
選挙が株価に与える影響の考え方
選挙が近づくと、「株価はどう動くのか」という話題がメディアをにぎわせます。「選挙は買い」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。
しかし、選挙と株価の関係は、シンプルな因果関係で語れるものではありません。過去のデータを丁寧に見ると、アノマリー(理論では説明しにくい経験則)が崩れたケースも存在します。本記事では、過去の解散総選挙や参議院選挙のデータをもとに、選挙が株式市場に与える影響を多角的に整理します。
この記事のポイント
- 「選挙は買い」は長年観察されてきたアノマリーだが、2024年衆院選で約35年ぶりに崩れた実績がある
- 選挙後の株価は上昇・下落まちまちであり、中長期的には経済政策の実効性と政権の安定性が重要な要因となる
- 選挙結果そのものより「その後どんな政策が打ち出されるか」が株式市場のパフォーマンスを左右するという専門家の見方がある
「選挙は買い」アノマリーとは何か
「選挙は買い」とは、衆議院解散から投票日にかけて日経平均株価が上昇しやすいという経験則(アノマリー)です。
三井住友DSアセットマネジメントの市川レポート(2026年1月15日)によると、1969年以降に行われた18回の衆院解散総選挙のうち、2024年を除く17回で、解散前営業日から投票日前営業日までの日経平均株価が上昇しました。
なぜこのような傾向が生まれるのでしょうか。選挙公約として示される経済政策への期待が株価を下支えする面があると考えられています。ただし、あくまで理論的な根拠が明確でない経験則であり、「必ず上がる」という保証はありません。
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過去の解散総選挙と株式市場の動向
選挙期間中と選挙後では傾向が異なる
「選挙は買い」アノマリーは、あくまで解散から投票日までの期間に観察されやすい傾向です。
同じ市川レポートでは、選挙後半年経過後の日経平均株価は上昇・下落まちまちであると指摘されています。与党が大きく勝利して安定政権が誕生したケースでも、選挙後に株価が下落した例が散見されます。
選挙が終われば、株式市場の視線は海外情勢・企業業績・金融政策など、選挙以外の材料へと移っていくためです。
2000年以降の衆院選データで見る「選挙後3ヶ月」
ニッセイ基礎研究所の分析(2024年11月6日)では、2000年以降8回の衆院選について投票日直前を100として12週後(約3ヶ月後)まで追跡しています。
その結果、投票直前より株価が高い状態を12週後まで維持し続けたのは8回中3回のみでした。投票後に株価が下落した場合は、12週後まで軟調な展開が続く傾向が確認されており、同研究は「総選挙後に株価が上昇し続けるとは言い切れない」と結論付けています。
衆院選後の株価推移(2000年以降・8回分) | 件数 |
|---|---|
12週後まで投票直前水準を上回り続けたケース | 3回 |
途中または12週後時点で投票直前水準を下回ったケース | 5回 |
出典:ニッセイ基礎研究所「『選挙は買い』は本当か」(2024年11月6日)
2024年衆院選:アノマリーが崩れた事例
2024年10月に行われた第50回衆院選は、「選挙は買い」アノマリーが崩れた約35年ぶりの例外となりました。
解散前営業日から投票日前営業日までの日経平均株価は下落しました。背景には、自公連立与党が1990年代以来となる衆院過半数割れという大敗を喫したことがあるとみられています(三井住友DSアセットマネジメント、2026年1月15日)。
この事例は、「アノマリーはあくまで統計的な傾向であり、選挙結果によっては機能しないことがある」という事実を示しています。
株式市場に影響を与える要因:政権の安定性と経済政策
不安定な政局は日本株のパフォーマンスを押し下げる傾向
第一生命経済研究所の分析(2025年7月16日)は、株価が「政治の安定性」だけでなく「課題となっている政策を有効に打ち出せるかどうか」に大きく左右されると指摘しています。
同研究によると、2007年から2012年にかけての不安定な政局期には、日本株のパフォーマンスがMSCI世界株指数・米S&P 500を明確に下回りました。一方、2012年12月の衆院選で自公が勝利し、デフレ脱却政策が打ち出されると、その後の日本株パフォーマンスは世界株指数を上回りました。
選挙結果(議席数)という「数字」だけでなく、その後に実行される経済政策の方向性が、株式市場のパフォーマンスを左右する重要な要因だということです。
内閣支持率と株価の関係
第一生命経済研究所の別の分析(2024年10月)では、内閣の最低支持率と在任中の株価パフォーマンスを比較しています。
その結果、最低支持率が低い内閣ほど株価パフォーマンスも悪い傾向が確認されました。この傾向は発足時の支持率との関係よりも強く、「高い支持を維持することが株価にも大きく影響する可能性がある」と結論付けています。
選挙で勝利した後も、政権が継続して高い支持を維持できるかどうかが、中長期的な株式市場の動向を考えるうえで見逃せない視点です。
近年の衆院選・参院選と株式市場の動向
2026年2月衆院選:自民党の歴史的大勝
2026年2月に行われた第51回衆院選では、自民党が単独で3分の2を超える議席を確保し、歴史的な大勝を収めました。
ニッセイアセットマネジメントの運用レポート(2026年5月8日)は、一般に長期政権は政策の継続可能性が高まることから株価が上昇しやすい傾向にあると指摘しています。同レポートでは、高市政権発足前後のTOPIXの推移が、歴代最長となる第2次安倍政権時と同様に上昇基調にあると分析しています(比較期間:第2次安倍政権は2012年12月14日〜2020年9月16日、高市政権は2025年10月3日〜2026年4月30日)。
(出典:ニッセイアセットマネジメント「今こそ日本株に注目!ROEに着目した銘柄選択にチャンス到来」(2026年5月8日)https://www.nam.co.jp/news/fpdf/260508_rc02.pdf)
ただし、この傾向もあくまで過去の観察であり、今後の政策運営や外部環境次第で変わり得る点には留意が必要です。
2025年参院選:選挙結果より政策の方向性が焦点に
2025年7月20日に投開票が行われた参院選では、選挙後の政権の枠組みと財政政策への影響が市場で注目されました。
ロイターの報道(2025年7月15日)によると、仮に財政拡張懸念を材料に海外勢が「日本売り」のトリガーを引く場合、発火点は債券市場との見方が多く、株価への影響は選挙結果そのものよりも、その後の政策の方向性と連立の枠組みに左右されるとの見方が示されました。
また、ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏(ロイター取材、2025年7月15日)は、仮に与党が議席を減らす結果になったとしても、「4月の株価急落以降の海外勢による日本株買いは政治期待でなく分散投資の一環であり、大きな巻き戻しはないだろう」との見方を示しています。
選挙結果と株価の因果を単純に結びつけない視点が、専門家の間でも共有されています。
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選挙と為替・長期金利の関係
選挙は株式市場だけでなく、為替や長期金利にも影響を与えることがあります。
第一生命経済研究所のレポート「参院選と長期金利」(藤代宏一氏、2025年7月17日)では、参院選前に長期金利が上昇した背景として、次の3つの要因を挙げています。
- 日銀の利上げ観測
- 米長期金利の上昇
- 日本の財政支出拡大観測
選挙前の財政政策への不透明感が金利上昇圧力となるという構図です。同研究は「参院選を通過すれば、日本固有の問題としての財政支出拡大観測に基づく金利上昇圧力は低下に向かうのではないか」と分析しています。
出典:第一生命経済研究所「参院選と長期金利」(藤代宏一、2025年7月17日)https://www.dlri.co.jp/report/macro/481320.html
長期金利の変動は株式のバリュエーション(割引率)にも影響するため、選挙を通じた金融市場全体の動きとして把握しておくことが有益です。
投資家が選挙と株価の関係を考えるうえでの視点
「アノマリー=法則」ではない
「選挙は買い」は長年観察されてきた傾向ですが、2024年衆院選のように崩れる事例もあります。アノマリーを参考情報として活用しつつも、それだけを根拠に投資判断を下すことはリスクを伴います。
選挙後の「政策の中身」を見る
過去のデータが示すのは、選挙結果(勝敗・議席数)よりも、その後に打ち出される経済政策の実効性が株式市場に影響を与えるという傾向です。第一生命経済研究所(2025年7月16日)も「効果的な経済政策が打ち出せるかどうかが、選挙結果以上に市場のパフォーマンスを左右する重要な要素」と結論付けています。
選挙後のニュースや政策動向を継続的にウォッチすることが、相場を読むうえで参考になります。
選挙は「一時的なイベント」として捉える
選挙は株式市場に短期的な変動をもたらすことがありますが、中長期的には企業業績・金融政策・海外情勢といったより大きな要因が株価を規定します。
選挙というイベントに過度に反応するのではなく、長期的な視点で投資方針を維持することが、多くの投資家にとって合理的な考え方と言えます。
まとめ
「選挙は買い」というアノマリーは、1969年以降の衆院解散総選挙で長く観察されてきた傾向です。しかし2024年衆院選では約35年ぶりに崩れ、選挙後の株価も上昇・下落まちまちであることが複数の研究で確認されています。
専門家の分析が示すのは、選挙結果(議席数・勝敗)よりも、その後の経済政策の方向性と政権の継続的な安定性が、株式市場のパフォーマンスを左右するという視点です。選挙をきっかけに市場動向への関心を高めつつも、因果を単純化しすぎない姿勢で情報を整理することが重要です。
よくある質問
Q. 「選挙は買い」は必ず当てはまりますか?
A. 必ずしも当てはまるわけではありません。三井住友DSアセットマネジメントの分析(2026年1月15日)によると、1969年以降18回の衆院解散総選挙のうち、2024年を除く17回で解散から投票日前営業日までの日経平均株価が上昇しましたが、2024年衆院選では約35年ぶりに下落しました。アノマリーはあくまで統計的な傾向であり、投資判断の唯一の根拠にはなりません。
Q. 選挙後も株価は上がり続けますか?
A. 選挙後の株価は上昇・下落まちまちです。ニッセイ基礎研究所の分析(2024年11月6日)では、2000年以降の8回の衆院選で投票日から12週後まで株価が投票直前水準を維持し続けたのは3回のみでした。選挙が終わると市場の関心は企業業績・金融政策・海外情勢など別の要因へ移っていきます。
Q. 与党が大勝すれば株価は上がりますか?
A. 一般に政権の安定は株価にプラスに働く傾向があるとされますが、それだけが決定要因ではありません。第一生命経済研究所(2025年7月16日)は「効果的な経済政策が打ち出せるかどうかが、選挙結果以上に市場のパフォーマンスを左右する重要な要素」と指摘しています。
Q. 選挙前後で為替や金利も動きますか?
A. 動くことがあります。第一生命経済研究所のレポート「参院選と長期金利」(藤代宏一、2025年7月17日、https://www.dlri.co.jp/report/macro/481320.html)は、2025年参院選前に長期金利の上昇圧力となった要因として、日銀の利上げ観測・米長期金利の上昇・日本の財政支出拡大観測の3つを挙げています。為替についても、同レポートは円安を日銀の利上げ観測を支える材料の一つとして位置づけており、選挙前後の財政・金融政策をめぐる見方の変化が金利と為替の双方に波及することがあります。金利や為替の変動は株式のバリュエーションや企業業績の見通しにも影響し得るため、株価と合わせて確認することが有益です。
Q. 米国株は日本の選挙の影響を受けますか?
A. 直接的な影響は限定的です。ただし、日本の政治動向が円相場や日本株市場の変動を通じてグローバルな資金フローに影響を与えるケースがあります。日本の選挙はあくまで米国株の外部要因の一つとして、広い視野で捉えることが参考になります。
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【免責事項】
・米国株式等の金融商品の取引に際しては、契約締結前交付書面等をよくお読みください。
・米国株式等の売買等にあたっては、株式相場や金利水準、為替水準等の変動や株式等の発行者等の業務や財産の状況等の変化による価格等の変動によって損失が生じるおそれがあります。
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・投資にあたっての最終決定はお客様ご自身の判断でお願いいたします。
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・本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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