2026年8月30日
NVIDIAの株価はなぜ動く?決算と需給から読む
エヌビディア(NVIDIA)の株価は、決算発表のたびに大きく動きます。
好決算を発表したにもかかわらず株価が下落する。逆に、予想を大幅に上回るガイダンスが出ると翌日に急騰する。こうした動きを「なぜ?」と感じたことがある投資家の方は多いはずです。
この記事では、NVIDIAの株価がどのような構造で動くのかを、決算の読み方とAI需要の需給バランスという2つの軸から整理します。
この記事のポイント
- NVIDIAの株価は「実績」よりも「次の四半期ガイダンス」への反応が大きい
- データセンター売上高と粗利益率(75%水準)が投資家の注目指標
- 米中輸出規制は継続的な不透明要因として株価に影響を与えている
NVIDIAの株価が動く根本的な理由
NVIDIAの株価が動く最大の理由は、AI向け半導体への需要期待が非常に高いためです。
市場参加者は、NVIDIAをAIインフラの中核企業と位置づけています。そのため、決算発表のたびに「AI投資は続くのか」「需要の成長は鈍化しないか」という問いへの答えを、決算数値から読み取ろうとします。
株価は将来の利益期待を反映するものです。NVIDIAの場合、その期待がきわめて大きいため、少しでも期待を下回る情報が出ると株価が敏感に反応します。
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決算発表の構造:実績よりガイダンスが動かす
NVIDIAの決算は年4回、2月・5月・8月・11月に発表されます。
決算発表では「実績(当四半期の売上高・EPS)」と「ガイダンス(次の四半期の見通し)」の2つが同時に示されます。投資家が特に注目するのは、後者のガイダンスです。
なぜなら、株価はすでに「期待値」を織り込んで動いているからです。実績がいくら良くても、ガイダンスが市場予想を下回れば「期待外れ」として売られることがあります。
ガイダンスと市場予想のギャップが株価を動かす
以下の表は、直近の四半期ごとのガイダンスと、その後の実績を整理したものです。
発表時期 | 発表したガイダンス | 対象四半期 | 実際の売上高 |
|---|---|---|---|
2025年8月(FY26 Q2決算) | 540億ドル(±2%) | FY26 Q3 | 570億ドル(前年同期比+62%) |
2025年11月(FY26 Q3決算) | 650億ドル(±2%) | FY26 Q4 | 681億ドル(前年同期比+73%) |
2026年2月(FY26 Q4決算) | 780億ドル(±2%) | FY27 Q1 | 816億ドル(前年同期比+85%) |
2026年5月(FY27 Q1決算) | 910億ドル(±2%) | FY27 Q2 | 発表待ち |
出典:NVIDIA公式プレスリリース(blogs.nvidia.co.jp)、各決算発表時点
注目すべきは、FY27 Q1の決算時に示されたガイダンス「780億ドル」に対し、実際の売上高が816億ドルとガイダンス上限を超えた点です。ガイダンスが市場予想の約726〜750億ドルを大幅に上回ったことも、投資家に強い成長継続のシグナルを与えました。
データセンター売上高:最重要指標の見方
エヌビディアの事業の中で、投資家が最も重視するのがデータセンター部門の売上高です。
FY2026通年のデータセンター売上高は1,937億ドルで、前年比68%増を記録しました(出典:NVIDIA公式プレスリリース、2026年2月25日)。これはNVIDIA全体の売上高2,159億ドルのうち、約90%を占める計算になります。
AI向けGPUへの設備投資が世界規模で続いている限り、データセンター売上高は成長の主エンジンです。逆に、この数字が鈍化したり、ガイダンスが市場予想を下回ったりすると、株価への下落圧力が生じます。
FY27 Q1(2026年2〜4月期)のデータセンター売上高は752億ドルで、前年同期比92%増でした(出典:NVIDIA公式プレスリリース、2026年5月20日)。全体売上高816億ドルに対するデータセンターの比率は約92%に達しています。
粗利益率75%が示す価格決定力
NVIDIAの株価に影響を与えるもう一つの指標が、売上高総利益率(粗利益率)です。
FY26 Q4の粗利益率はGAAPベースで75.0%、非GAAPベースで75.2%でした(出典:NVIDIA公式プレスリリース、2026年2月25日)。
投資家がこの75%水準を注視するのは、それが「価格決定力」の証拠と解釈されるからです。競合他社が追いついてきた場合、値引き競争が起きて粗利益率は低下します。75%を維持できているということは、NVIDIAのGPUに代替品がない、あるいは代替が難しい状態が続いていることを示唆します。
粗利益率が低下し始めると、EPS(1株当たり利益)の圧迫につながるため、長期投資家にとっても重要なシグナルとなります。
「好決算なのに下落」が起きる構造
NVIDIAの決算を見ていると、「強い数字が出たのに株価が下がる」という現象が繰り返されます。
この現象には、次の3つの構造的な理由があります。
1. 期待値の先行織り込み 決算発表前から「良い決算が出る」という期待で株価が上昇しているケースがあります。実際に良い決算が出ても、すでに価格に反映されているため、「材料出尽くし(好材料がすでに株価に織り込まれた状態)」として売りが出ます。
2. ガイダンスの数値より「サプライズ幅」が重要 780億ドルのガイダンスが出ても、市場が850億ドルを期待していれば「失望」と受け取られます。ガイダンスの水準そのものではなく、予想との差分(サプライズ幅)が株価反応を決めます。
3. 機関投資家の利益確定売り 決算発表は、機関投資家が保有ポジションを整理するタイミングとしても使われます。好決算を売り場として活用するプレーヤーが一定数いるため、発表直後に下落が起きることがあります。
日本経済新聞(2026年5月20日)は、「好調な決算に投資家が慣れており」、決算翌日に下落が続くパターンを指摘しています。
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米中輸出規制:継続するリスク要因
NVIDIAの株価に対する構造的なリスクとして、米中半導体輸出規制があります。
FY26 Q4およびFY27 Q1のガイダンスには、いずれも「中国からのデータセンター コンピューティングの売上高を想定していません」と明記されています(出典:NVIDIA公式プレスリリース、2026年2月25日・5月20日)。
FY26 Q2(2025年7月27日終了)では、中国顧客へのH20販売実績がゼロだったことも記録されています(出典:NVIDIA公式プレスリリース、2025年8月)。
規制の変化は株価に直接影響します。規制が緩和されれば中国市場への再参入期待から上昇要因になり、規制が強化されれば売上高の上限が切り下がるリスクとして下落要因になります。この不確実性が、NVIDIAの株価に常に内包されているリスクの一つです。
株主還元の拡大が長期投資家に与える影響
2026年5月20日に発表されたFY27 Q1決算では、株主還元に関する重要な情報が含まれていました。
NVIDIAは同四半期に、株式買い戻しおよび現金配当で約200億ドルの株主還元を実施しました。さらに取締役会は800億ドルの追加株式買い戻しを承認し、四半期配当を1株0.01ドルから0.25ドルへ25倍に増額しています(出典:NVIDIA公式プレスリリース、2026年5月20日)。
株式買い戻しは1株当たりの価値(EPS)を押し上げる効果があります。
計算の考え方:仮に発行済み株式数が減少すれば、同じ純利益でもEPS(純利益 ÷ 発行済み株式数)は上昇します。例として、純利益が一定のまま株式数が10%減れば、EPSは約11%(= 1 ÷ 0.9 − 1)上昇します。
長期投資家にとっては、成長期待だけでなく、株主還元の規模と継続性も銘柄評価の重要な要素となります。
まとめ
NVIDIAの株価が動く構造を整理すると、次のようになります。
- 実績の良し悪しよりも、ガイダンスが市場予想をどれだけ上回るかが株価反応を決める
- データセンター売上高と粗利益率75%水準が、AI需要の継続と価格決定力を示す主要指標
- 米中輸出規制は複数の四半期にわたって株価の不透明要因であり続けている
- 好決算後の下落は「期待の先行織り込み」「サプライズ幅の問題」「機関投資家の利益確定」という3つの構造から説明できる
決算発表のたびに株価が大きく動くNVIDIAは、数字の読み方を知っているかどうかで、同じ情報から得られる理解の深さが変わります。
よくある質問
Q. NVIDIAの決算はいつ発表されますか?
A. NVIDIAの決算発表は年4回、2月・5月・8月・11月に行われます。発表時刻は米国東部時間の市場引け後が通例です。
Q. ガイダンスとは何ですか?
A. ガイダンスとは、企業が次の四半期について自社で見通す売上高や利益の予想レンジです。NVIDIAの場合、「±2%」という幅を持たせた数値を示します。市場はこの数値をウォール街のコンセンサス予想と比較して、上回ったか下回ったかを評価します。
Q. NVIDIAの株価が好決算後に下落するのはなぜですか?
A. 主な理由は3つです。①決算前から上昇していた期待が「材料出尽くし(好材料が既に株価に織り込まれた状態)」として売りに転じる、②ガイダンスが市場予想を上回っていても「サプライズ幅」が小さいと失望される、③機関投資家が好決算を利益確定の機会として活用する、という構造です。
Q. 粗利益率はなぜ重要なのですか?
A. 粗利益率は、製品の競争力と価格決定力を示す指標です。NVIDIAが75%水準を維持していることは、AI向けGPUに代替品が少なく、値引きなしに高価格で販売できている状態を意味します。この水準が低下し始めると、EPS(1株当たり利益)の圧迫につながるため、投資家が注視しています。
Q. 米中輸出規制はNVIDIAの決算にどう影響しますか?
A. 規制の影響で、NVIDIAは複数の四半期ガイダンスに「中国からのデータセンター コンピューティングの売上高を想定していません。」と明記しています。中国市場は潜在的な大きな需要源であるため、規制の動向が変わるたびに株価の上昇・下落要因になります。
米国株投資の判断材料として、NVIDIAのような銘柄の決算構造を理解したい方は、Woodstockの取扱銘柄ページで実際に確認しながら学ぶことができます。お取引ページでは取引の詳細もご覧いただけます。
【免責事項】
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