2026年8月6日
米国株の評価損益と実現損益の違い|損益の見方
米国株に投資していると、証券口座の画面に「評価損益」と「実現損益」という2つの数字が並んでいるのに気づきます。どちらも「損益」という言葉を含んでいますが、その意味と、税金への影響は大きく異なります。
この違いを正しく理解しておくことは、株式投資の判断精度を高めるうえで欠かせません。本記事では、2つの損益の定義から計算方法、課税タイミング、NISA口座での扱いまでを体系的に整理します。
この記事のポイント
- 評価損益(含み損益)は保有中の未確定損益であり、売却するまで課税されない
- 実現損益は売却によって確定した損益で、利益には原則20.315%の税率が適用される
- 外貨建ての米国株では、売却時の為替レートが実現損益の計算に影響する
評価損益とは|保有中の「含み損益」の意味
評価損益とは、現在保有している株式や投資信託などの金融商品を、今すぐ売却したと仮定したときの損益のことです。「含み損益」とも呼ばれます。
計算式はシンプルです。
評価損益 = 現在の市場価格 × 保有株数 ― 取得価額の合計
たとえば、1株100ドルで10株購入した銘柄が現在120ドルになっている場合、評価損益はプラス200ドル(=120ドル×10株 ― 100ドル×10株)となります。
評価損益はあくまで「帳簿上の数字」です。市場の変動によって毎日変わり、売却しない限り確定しません。口座の残高欄に表示されていても、それはまだ手元に入っていないお金です。
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実現損益とは|売却で確定する損益の意味
実現損益とは、株式等を実際に売却(決済)したことで確定した損益のことです。売却が約定した時点で金額が固定されます。
実現損益 = 譲渡価額 ― 取得費(購入代金+購入手数料等)
(出典:国税庁 タックスアンサー No.1464「譲渡した株式等の取得費」令和7年4月1日現在法令等)
取得費には購入代金だけでなく、購入時に支払った手数料(消費税含む)も含まれます。実現損益がプラスであれば「譲渡益」、マイナスであれば「譲渡損」となります。
評価損益と実現損益の違い|一覧表で確認
2つの損益の主な違いを表にまとめます。
項目 | 評価損益(含み損益) | 実現損益 |
|---|---|---|
確定タイミング | 保有中(未確定) | 売却・決済時(確定) |
課税対象 | 対象外 | 対象(申告分離課税) |
税率 | ― | 原則20.315% |
損益通算 | 不可 | 可(上場株式等の間で) |
繰越控除 | 不可 | 可(最長3年) |
表示場所の例 | 口座の保有資産欄 | 取引履歴・損益明細欄 |
評価損益の段階では損益通算も繰越控除もできません。含み損を抱えていても、税務上は損失として認識されないのです。
実現損益の課税|税率と申告の仕組みを確認
株式等の売却益(実現損益がプラスの場合)は「申告分離課税」の対象となります。税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。
(出典:国税庁 タックスアンサー No.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」令和7年4月1日現在法令等)
特定口座(源泉徴収口座)を選択している場合、証券会社が所得税・復興特別所得税(15.315%)と住民税5%を源泉徴収・特別徴収するため、原則として確定申告は不要です。
(出典:国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」2026年)
一方、実現損失が生じた場合は、確定申告により同年の上場株式等に係る配当所得等(申告分離課税を選択したもの)と損益通算できます。さらに控除しきれない損失は翌年以後3年間の繰越控除が可能です。
(出典:国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法37の12の2)」令和5年4月1日現在法令等)
米国株の実現損益計算|為替レートの影響を理解する
米国株は外貨建て取引のため、実現損益の計算には円換算が必要です。取引を行った時の外国為替の売買相場(原則TTM)を使って換算します。
(出典:国税庁「令和6年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」2024年)
保有期間中の為替変動分は、譲渡所得等の金額の中に含まれて計算されます。為替差益を雑所得として別途区分する必要はありません。
計算例
項目 | 金額 |
|---|---|
購入時:100ドル × 10株、購入時レート140円/ドル | 取得費 140,000円 |
売却時:120ドル × 10株、売却時レート150円/ドル | 譲渡価額 180,000円 |
実現損益 | +40,000円 |
この40,000円の中には、株価上昇分(20ドル×10株)と為替レートの変動分(140円→150円)の両方が含まれています。ドル建てでは200ドルの利益でも、円換算後の実現損益は為替レート次第で変わります。
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複数回購入した銘柄の取得単価|総平均法に準ずる方法
同一銘柄の株式を2回以上にわたって購入した場合、取得費の算出には総平均法に準ずる方法を使います。
1単位当たりの取得価額 =(直前譲渡後の保有株の取得価額総額 + 今回譲渡までの購入価額総額)÷ 対応する株数の合計
この単価に売却株数を乗じた金額が、実現損益の計算に使う取得費となります。
(出典:国税庁 タックスアンサー No.1466「同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」令和7年4月1日現在法令等)
計算例
購入回 | 株数 | 単価(円換算) | 取得価額合計 |
|---|---|---|---|
1回目 | 5株 | 10,000円 | 50,000円 |
2回目 | 5株 | 14,000円 | 70,000円 |
合計 | 10株 | 平均取得単価 12,000円 | 120,000円 |
この状態で5株を売却した場合、取得費は「12,000円 × 5株 = 60,000円」となります。口座に表示される「平均取得単価」はこの計算に基づいています。
なお、取得費が不明な場合は「売却代金の5%相当額」を取得費として使うことが認められています。たとえば300万円で売却した場合、取得費が不明なときは15万円を取得費として計算できます。
(出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー「取得費とは」令和元年4月1日現在法令等)
NISA口座での評価損益・実現損益の扱い
新NISA(令和6年1月1日開始)の口座内で取得した上場株式等の売却益(実現損益がプラスの場合)および配当等は非課税です。非課税保有限度額は1,800万円(成長投資枠の上限は1,200万円)で、非課税保有期間は無期限です。
ただし、NISA口座内で生じた実現損失は「ないものとみなされ」、課税口座の利益との損益通算や繰越控除はできません。この点は課税口座と大きく異なります。
(出典:国税庁 タックスアンサー No.1535「NISA制度」令和6年以降適用)
評価損益がマイナスの状態でNISA口座の銘柄を売却しても、その損失は税務上認識されません。NISA口座での損益の扱いは、課税口座とは別の基準で考える必要があります。
まとめ
評価損益は保有中の未確定損益であり、課税対象にはなりません。実現損益は売却によって確定した損益で、利益には原則20.315%の税率が適用されます。
米国株では為替レートが実現損益の金額に影響するため、売却時の円換算額を意識することが重要です。また、複数回に分けて購入した銘柄の取得費は総平均法に準ずる方法で算出されます。
NISA口座では実現益が非課税になる一方、実現損失は損益通算に使えません。2つの損益の違いと課税ルールを正しく理解したうえで、取引の判断に活かしてください。
よくある質問
Q1. 評価損益がプラスでも税金はかかりませんか?
A. はい、かかりません。評価損益(含み益)は保有中の未確定の損益であり、課税対象となるのは売却して実現損益が確定した時点です。国税庁の権利確定主義に基づき、売却前は所得として認識されません。
Q2. 実現損失が出た場合、どう活用できますか?
A. 確定申告により、同年の上場株式等に係る配当所得等(申告分離課税を選択したもの)と損益通算できます。さらに控除しきれない損失は翌年以後3年間の繰越控除が可能です。ただし、含み損の段階では損益通算・繰越控除はできません。
Q3. 米国株の実現損益の計算で為替レートはいつのものを使いますか?
A. 取引を行った時の外国為替の売買相場(原則TTM)を使います。購入時と売却時それぞれのレートで円換算し、その差額が実現損益に含まれます。為替差益を別途雑所得として計算する必要はありません。
Q4. NISA口座で含み損が出ている銘柄を売却するとどうなりますか?
A. NISA口座内で生じた譲渡損失は「ないものとみなされ」ます。課税口座の利益との損益通算や繰越控除には使えません。この点は課税口座と大きく異なるため、注意が必要です。
Q5. 取得費がわからない場合、実現損益はどう計算しますか?
A. 取得費が不明な場合は、売却代金の5%相当額を取得費として計算することが認められています。たとえば売却代金が300万円であれば、15万円を取得費として実現損益を算出できます。
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