2026年5月25日
SpaceXのIPOはいつ?史上最大級IPO
イーロン・マスク氏率いるSpaceXが、史上最大級のIPOに向けて動き出しました。上場時期は早ければ6月12日と報じられており、想定時価総額は約1.75兆ドル規模。SECに提出されたS-1資料からは、同社の独特な事業構造が見えてきます。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)ポイント
- SpaceXは「SPCX」のティッカーでNasdaq上場を目指す。上場は早ければ6月12日、想定時価総額は約1.75兆ドル
- SpaceXはStarlinkの収益をStarshipやAIといった将来事業へ投じる構造
- 期待は大きい一方で、AI事業の赤字、Starshipの不確実性、マスク氏に集中する議決権など、投資家が注意すべきリスクもある。
イーロン・マスク氏のSpaceXが、ついに上場へ動き出しました。SpaceXは2026年5月20日、米SEC(証券取引委員会)へS-1登録届出書を提出。Class A株をNasdaqとNasdaq Texasに「SPCX」のティッカーで上場する方針を明らかにしました(*1)。ロイターによれば、想定時価総額は約1.75兆ドル、調達額は約750億ドル、早ければ6月12日に上場とされています(*2)。実現すれば、歴史上最大級のIPOになりそうです。
SpaceXってどんな会社?
SpaceXといえば、宇宙事業を行っている企業というイメージがあると思います。先週SEC(証券取引委員会)に提出されたS-1登録届出書から、SpaceXの事業内容を確認してみましょう。

1つ目は、ロケット打ち上げと宇宙輸送です。再使用型ロケット「Falcon 9」と有人宇宙船「Crew Dragon」が中核で、NASAの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションまで運ぶ役割も担っています。民間企業が国の有人ミッションを支えること自体、SpaceXの信頼性を示す実績といえます。
2つ目がStarlinkです。低軌道に多数の小型衛星を展開し、家庭、船舶、航空機、企業向けにネットを提供しています。加入者はすでに1,000万人を超え、もはやSpaceXの稼ぎ頭です。自社ロケットで衛星を打ち上げ、自社サービスとして通信を売る。この垂直統合こそがSpaceXの強みと言えます。日本でもKDDI、ソフトバンク、ドコモがStarlinkを活用した衛星通信サービスを展開しています。
3つ目が、次世代の超大型ロケット「Starship」です。完全再使用型を目指し、月・火星への大量輸送や、将来的な宇宙インフラ構想の中核になる存在です。ただし、現在は飛行試験中で、商業的な成功はまだ未確定。期待は大きい一方で、開発費もリスクも大きい領域です。

そして、今SpaceXが上場に動く背景には、Starlinkと再使用ロケットで収益の土台が見え始めた一方、StarshipやAIへの投資負担が急拡大していることがあります。ロイターは、同社の将来計画がStarshipによる打ち上げコスト低下や、宇宙空間でのAIデータセンターといった未確立の市場に大きく依存していると報じています。つまり今回のIPOは、Starlinkで稼げるようになった今、次の大型投資を公開市場で支えるための上場と見られます。
IPOの規模とスケジュール
報道によれば、SpaceXは約750億ドルを調達し、約1.75兆ドルの評価を目指すとされています。6月4日にロードショー、6月11日に価格決定、早ければ6月12日に上場というスケジュールも報じられています(*2)。
ただし、これは報道ベースの見通しであり、最終条件は市場環境によって変わる可能性があります。 気になるのは、市場がこの規模を受け止められるのかという点です。評価額が高くなれば、上場後に求められる成長のハードルも上がります。公開価格が強気すぎれば、上場直後の値動きが重くなる可能性もあります。なお、S-1のTAM(会社が理論上狙える市場規模)には過大との指摘もあります(*3)。
もう1つ重要なのが議決権構造です。報道では、マスク氏は上場後も85.1%の議決権を保持する見通しです(*4)。良く言えば、短期株主に振り回されず長期プロジェクトを進めやすい。悪く言えば、外部株主の発言力はかなり限定されます。SpaceX株を買うことは、かなりの部分でマスク氏のビジョンに乗ることでもあります。
2-1. IPO後の需給と資金使途にも注意
もう1つ見ておきたいのが、IPO後に「誰が売り、誰が買うのか」という点です。SpaceXのIPOは、会社が成長資金を集めるための上場である一方、これまで株を持っていた既存株主にとっては、株を現金化する機会にもなります。
通常、IPO後は創業者や社員、初期投資家などの既存株主がすぐに株を売れないよう、一定期間の売却制限が設けられます。これをロックアップといいます。一般的には180日程度が多いですが、ロイターによれば、SpaceXでは一部の既存株主が通常より早い段階から、段階的に株式を売却できる仕組みになる見通しです(*5)。そのため、上場後しばらくは売り圧力が意識されやすくなる可能性があります。
一方で、買い手側にも注目すべき動きがあります。Nasdaq-100では、条件を満たす大型の新規上場銘柄を15取引日後に組み入れられるルールが導入されています。また、CRSP系指数では、一定条件を満たすIPO銘柄を5日間の通常取引後に追加できる仕組みがあります。FTSE Russellも、Russell US Indexesで大型IPOを5取引日後に組み入れられるFast Entryルールを導入しました。
わかりやすく言えば、SpaceXのような巨大企業が早い段階で主要な指数に入ると、その指数に連動するETFや投資信託がSpaceX株を買う必要が出てきます。たとえば、QQQはNasdaq-100に連動するETFです。また、VTIやVUGもCRSP系の指数に連動しています。つまり、既存株主が株を売れるようになるタイミングと、ETFなどによる買い需要が発生するタイミングが近くなる可能性があるということです。
これは「誰かが意図的に市場へ売りを押し付けている」と断定する話ではありません。ただ、結果として、既存株主が売りやすくなり、その一部を指数連動ファンドや市場全体が受け止める構図になる可能性はあります。
加えて、IPOで調達した資金が何に使われるのかも重要です。ロイターは、SpaceXがIPO前に200億ドル規模のブリッジローンを使って既存債務を借り換えており、他の資金で返済できない場合にはIPOで調達した資金が返済に使われる可能性があると報じています(*6)。つまり今回のIPOは、StarshipやAIへの成長投資だけでなく、借金の返済や財務の整理という意味合いも持つ可能性があります。
SpaceX株を見るうえでは、事業の成長性だけでなく、IPO後の需給と資金使途も重要です。誰がどのタイミングで売れるのか、主要指数にいつ組み入れられるのか、ETFやパッシブ資金がどの程度買い手になるのか。そしてIPO資金が成長投資に使われるのか、借金返済にも回るのか。これらも、上場後の株価を考えるうえで確認しておきたいポイントです。
関連銘柄とETFはどう見る?
SpaceXが上場すれば、SPCXだけでなく宇宙関連銘柄やETFにも注目が集まりやすくなります。Rocket Lab(RKLB)は宇宙輸送インフラ、AST SpaceMobile(ASTS)やPlanet Labs(PL)は地球観測の文脈で見られやすい銘柄です。

20日のSpaceXの上場のニュースが出てから、宇宙関連銘柄の株価は上昇していいます。 ただし、「SpaceXがすごいから宇宙関連株は全部買い」という単純な話ではありません。SpaceXの強さは、ロケット、衛星、通信サービスを1社でつなぐ垂直統合にあります。
関連銘柄の多くは、その一部を担う企業です。IPO前後にテーマ買いで上がる可能性はありますが、上場後に資金がSPCXへ集中し、周辺銘柄が売られる展開もあり得るかもしれません。
まとめ
SpaceXは、Starlinkで収益を生みながら、StarshipやAIといった大きな成長領域に投資している企業です。ロケット、衛星、通信サービスを自社でつなぐ強みがあり、イーロン・マスク氏への期待も含めて、市場の注目度はかなり高くなりそうです。
ただし、今回のIPOは「夢のある大型上場」と見るだけでは不十分です。上場後には、既存株主が株を売りやすくなる一方で、主要指数に組み入れられればETFなどから買い需要が生まれる可能性があります。また、IPOで集めた資金の一部が借金返済に回る可能性もあります。
そのため、SpaceX株を見るうえでは、事業の成長性だけでなく、上場後に誰が売り、誰が買うのかも重要です。今後は公開価格やロックアップ解除、指数への組み入れ、SECへの追加開示に注目が集まりそうです。
参考文献
(*1)SEC, “Form S-1, Space Exploration Technologies Corp.”
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026036936/spaceexplorationtechnologi.htm
(*2)Reuters, “SpaceX accelerates IPO timeline, targets June 11 pricing on Nasdaq”
https://www.reuters.com/world/spacex-accelerates-ipo-timeline-targets-june-11-pricing-nasdaq-2026-05-15/
(*3)Axios, “Musk’s SpaceX IPO total addressable market math”
https://www.axios.com/2026/05/24/musk-spacex-ipo-tam
(*4)Reuters, “SpaceX IPO filing lays bare losses and Musk control as it stakes future on AI”
https://www.reuters.com/legal/transactional/bound-mars-elon-musks-spacex-unveils-filing-blockbuster-ipo-2026-05-20/
(*5)Reuters, “SpaceX to allow early share resale before usual six-month lock-up”
https://www.reuters.com/legal/government/spacex-allow-early-share-resale-before-usual-sixmonth-lock-up-2026-05-22/
(*6)Reuters, “SpaceX refinanced debt with stopgap $20 billion loan before IPO filing”
https://www.reuters.com/legal/transactional/spacex-refinanced-debt-with-stopgap-20-billion-loan-before-ipo-filing-2026-04-23/
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