March 15, 2026
Palantir(パランティア)- イランの軍事作戦に使われたとされるProject Mavenとは?
.png&w=3840&q=75)
「戦争が始まる前に勝利を。(Battles are won before they begin.)」
これは、米国防総省に技術を提供するPalantir(パランティア)が2024年に公開した軍事技術PR動画のキャッチコピーです。動画の中では、モニター越しに指揮者のように振る舞う人物がドローンを操り、戦艦群を消し去る様子が描かれていました。まるでSF映画のワンシーンです。

The Future of Warfare | Palantir
2026年3月現在、アメリカとイランの間で起きている軍事衝突において、アメリカ軍がまさにこのような「AIによる監視・ターゲティングシステム」を実戦投入していると報じられています。そしてそのシステムの中核にあるのが、Palantirが開発したProject Mavenソフトウェアです。
先週、PalantirはこのProject Mavenがどのようにターゲットの選定から攻撃指示までを行うのかを公開しました。ターゲットを選択すると、AIが次にとるべき行動の選択肢を提示し、最終的な攻撃判断までモニター上で完結できるというシステムです。
この記事では、なぜPalantirというシリコンバレーの企業が「戦争」の中核にいるのか、そしてProject Mavenとは一体何なのかをわかりやすくお伝えしていきます。
1. イラン軍事作戦で使われているPalantirのテクノロジー
2026年3月初旬、アメリカとイスラエルは共同でイランに対する大規模な軍事作戦「Operation Epic Fury」を実行しました。この作戦ではイランの最高指導者ハメネイ師が殺害されたと報じられ、中東情勢は一気に緊迫の度合いを増しています。
PalantirのCEOであるアレックス・カープ氏は、CNBCの独占インタビューの中で、自社の技術が中東の戦争で使われていることを認めました。ただし、Project Mavenがハメネイ師殺害に直接使われたかどうかについては「具体的なことにはコメントできない」と述べるにとどめています。
一方でカープ氏は、こうも語っています。「PalantirのProject Mavenがその中核的な基盤であるということは報道で読みました。そして中東のアラブ・非アラブ問わず、中東のアラブ・非アラブの同盟国が、Palantirのプラットフォームの利用者である可能性があるかもしれないということも読みましたし、それは急速に拡大しています」と。直接の肯定は避けつつも、自社技術の存在感を示す発言でした。
さらに注目すべきは、このシステムがベネズエラのマドゥロ大統領の拘束作戦にも使われていたことです。ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、PalantirのProject Mavenは、Anthropic社のAI「Claude」と組み合わせて使用されたとされています。つまり、AIがリアルタイムで衛星画像を解析し、ターゲットの位置を特定し、作戦の選択肢を提示するという、まさに「AIが戦争を動かす」時代が現実のものとなっているのです。
カープ氏はa16zのカンファレンスでもこう強調しました。「今、より精密に、より正確に、より迅速にターゲットを狙えるようになったことで、アメリカが敵に対してそれを行使できるようになったこと自体が、戦争のあり方を変えてしまった」と。ここには、テクノロジーが単なる補助ツールではなく、戦争の勝敗そのものを決定する「主役」になったという認識があります。
2. なぜPalantirは「戦争省」と手を組んだのか―思想と歴史
Palantirは2003年、ピーター・ティールとアレックス・カープによって設立されました。社名の由来は、J.R.R.トールキンの『指輪物語』に登場する「パランティーア」――遠くのものを見通すことができる魔法の石です。この名前が象徴するように、Palantirは最初から「情報を張り巡らせて、見えないものを見る」ことを使命として生まれた企業でした。
では、なぜシリコンバレーのテック企業が、ここまで深く軍と関わるようになったのでしょうか。その背景には、共同創業者ピーター・ティールの思想が大きく影響しています。
ティールはPayPalの創業者であり、Facebook初期の投資家としても知られる人物ですが、同時に非常に熱心なキリスト教徒でもあります。彼の世界観を理解するうえで重要なのが、フランスの哲学者ルネ・ジラールの「模倣欲望」という概念です。ジラールによれば、人間は根源的に他者の欲望を模倣する存在であり、限りあるリソースを巡って暴力的な奪い合いが生まれる。その暴力の連鎖を止めたのがイエス・キリストの自己犠牲だった、というのがジラールの考えであり、ティールはこれを深く信じています。
この思想から、ティールは2つの「破滅」を避けようとしています。ひとつは核戦争による世界の滅亡。もうひとつは、リベラルな世界政府による信仰の否定です。ティールにとって、国連的な国際秩序やリベラルな世界統合は、キリスト教的な価値観を脇に追いやる「反キリスト的」な方向性なのです。
では、その間をどう進むのか。ティールの答えが「インテリジェンス(情報収集)」でした。世界規模の情報網を張り巡らせることで、核の暴発やテロを未然に防ぎ、アルマゲドンにも世界政府にもならない「第三の道」を歩む。Palantirはまさにその思想の具現化として生まれたのです。
カープ氏もまた、この考えを引き継いでいます。彼はこう語っています。「我々は専制国家が先進的なAIを手にして世界の脅威になる前に、アメリカのような国がAIを発展させて抑制すべきだ」と。つまり、アメリカが軍事的に圧倒的な優位を保つことこそが、世界の安定につながるという信念です。
カープ氏はa16zのサミットでも印象的な言葉を残しています。「私たちは20年間、フリークショー(変人の見世物)でした。そしてこの瞬間のために20年を費やしてきた」と。Palantirは長い間、シリコンバレーの中でも「軍と組むテック企業」として異端視されていました。しかし今、彼らの技術が実戦で圧倒的な成果を出したことで、その立場は一変しています。アメリカがイラン、ベネズエラで見せた軍事的優位には、Palantirの技術が不可欠だったのです。
3. Project Mavenとは何か
Project Maven(プロジェクト・メイヴン)は、もともと2017年に米国防総省が立ち上げたAI活用プログラムで、正式名称は「アルゴリズム戦クロスファンクショナルチーム(AWCFT)」といいます。当初はGoogleが契約を結んでいましたが、社員の抗議によりGoogleが撤退。その後、Palantirがこのプロジェクトの中心的な担い手となりました。
では、Project Mavenは具体的に何をするのでしょうか。
簡単に言えば、AIがリアルタイムで衛星画像やドローン映像を解析し、敵の位置や動きを特定する監視・ターゲティングシステムです。従来は、膨大な偵察映像を人間のアナリストが何時間もかけて分析していました。それをAIが瞬時に処理し、「ここに敵がいる」「この車両は軍事車両である」といった情報を自動的に割り出します。
Palantirは先週AIPCon9を開催。AIPCon 9とは、同社が主催する、パランティアの「Artificial Intelligence Platform (AIP)」に焦点を当てた大規模な顧客・パートナー向けカンファレンスです。
AIPCon9で公開した情報によれば、このシステムはさらに進化しています。ターゲットを画面上で選択すると、AIが次にとるべき行動の選択肢を提示してくれます。たとえば「ドローンで追跡する」「別の偵察手段で確認する」「攻撃を実行する」といったオプションが表示され、最終的な攻撃指示までモニター上で完結できるのです。
カープ氏はCNBCのインタビューでこう説明しています。「産業時代に構築された政府や商業のインフラストラクチャーを、ポスト産業時代のテクノロジーを活用できるインフラに変革しなければならない」と。つまり、20世紀型の「人海戦術」的な情報処理から、AIによるリアルタイムの意思決定支援へと、軍のあり方そのものを根本から変えようとしているのです。
そしてこのシステムは、単にアメリカ軍だけが使っているわけではありません。カープ氏の発言からは、中東の同盟国にも急速にPalantirのプラットフォームが展開されていることがうかがえます。アメリカと同盟国との間で戦闘データをリアルタイムに共有し、連携して作戦を遂行する。これはまさに「AIによる戦場のネットワーク化」と言えるでしょう。
4. 戦争の形が変わる―これからの戦争とは
今回のイランとの衝突が示しているのは、戦争の形そのものが根本的に変わりつつあるということです。
その象徴的な出来事が、イランによるAmazonデータセンターへの攻撃でした。イランは先週、中東にあるAmazonの3つのデータセンターを爆撃しました。従来の戦争であれば、攻撃対象は軍事基地や兵器工場が中心でした。しかしイランが狙ったのは、民間企業のデータセンターだったのです。
カープ氏はこれについてこう評しました。「彼らは邪悪だが、愚かではない。攻撃対象のリストを見てほしい。そしてリストに載っていないものも。戦争の真っ只中で、ハードコアな軍事企業のリストになると思うだろう。しかし彼らが興味を持っているのは、自分たちでは作れないものだ」と。
つまり、AI時代の戦争では、データセンターやクラウドインフラといったデジタル基盤そのものが「国家安全保障上の資産」になっているのです。政府や大企業が利用する重要なデジタルインフラを破壊すれば、軍事作戦の遂行能力に大きなダメージを与えることができる。イランはそのことを十分に理解していたわけです。
カープ氏はa16zのサミットでも、この変化の本質を語っています。Palantirの設立から現在までの間に、まずソフトウェアの台頭があり、次にディフェンステック(防衛テクノロジー)の興隆があり、そして今、ソフトウェア・ハードウェア・AIの三位一体が求められる時代に入ったと。そしてこの変化こそが、アメリカを「他国が理解できないレベル」で圧倒的に有利にしているのだと。
実際、カープ氏は「敵国は『何が起きたんだ?アフガニスタンの撤退のようなアメリカだと思っていたのに』と混乱している」と述べています。AIを活用したアメリカの新しい軍事能力は、これまでの「アメリカ軍」のイメージを覆すほどのインパクトを持っているのです。
しかし同時に、この技術がもたらす倫理的な問いも深刻です。ピーター・ティールの思想に詳しい立教大学の加藤教授は、こう指摘しています。ティール自身はAIによるインテリジェンスで暴力の連鎖を抑止できると考えているが、「それを使いこなすだけの人間がいるのかどうかが大きな疑問だ」と。少数の人間が圧倒的な力を握ったとき、それが本当に善のために使われるのか――まさに『指輪物語』の「一つの指輪」が象徴する問いが、現実のものとなっているのです。
加藤教授はさらにこう述べています。「民主主義は非常に効率が悪いし、堕落しやすいし、平凡になりがちだけれども、なんとかして牽制し合って平和を担保しようとするものだ」と。AIが戦争のスピードと精度を飛躍的に高めた今、人間の判断や民主的な議論が追いつかないまま「ボタンひとつ」で攻撃が実行される世界が来ているのかもしれません。
戦争は、もはや戦場だけで戦われるものではなくなりました。データセンターが爆撃対象になり、AIがターゲットを選定し、モニターの向こう側から攻撃が実行される。Palantirのキャッチコピーが語るように、「戦争が始まる前に勝利が決まる」時代が、すでに始まっています。
その技術を誰が、どのような倫理観のもとで使うのか。この問いに対する答えを、私たちはまだ持ち合わせていません。
参考文献
- Mody, Seema. "Palantir's technology gives the West a critical edge in Middle East, CEO Alex Karp says." CNBC, March 13, 2026. https://www.cnbc.com/2026/03/13/palantir-technology-middle-east-war-alex-karp.html
- PIVOT公式チャンネル.「ピーター・ティールの思想:宗教・科学・政治」YouTube, 2026. https://www.youtube.com/watch?v=PDQhDz67QLs
- CNBC Television. "Here's how Alex Karp explains Palantir's role in modern warfare." YouTube, 2026. https://www.youtube.com/watch?v=duqQhb7iJt8
- a16z. "Palantir CEO on Iran, AI Weapons and America's Advantage | a16z American Dynamism Summit." YouTube, 2026. https://www.youtube.com/watch?v=Wj6ttdIeBnE
- Palantir Technologies. "AIP for Defense — Battles are won before they begin." YouTube, 2024. https://www.youtube.com/watch?v=UiiqiaUBAL8
- The Wall Street Journal. "Pentagon Used Anthropic's Claude in Maduro Venezuela Raid." 2026. https://www.wsj.com/politics/national-security/pentagon-used-anthropics-claude-in-maduro-venezuela-raid-583aff17
Woodstock | ウッドストック 手数料完全無料・24時間取引アプリ
弊社Woodstock(ウッドストック)では、米国株式投資アプリを運営しています。
Woodstockアプリでは、
・手数料完全無料(為替手数料・出金手数料・取引手数料・残高手数料)
・24時間取引
・200円から投資可能
など投資のハードルを下げ、投資をもっと自由にするサービスを提供しています。
手数料無料でいつでも取引できるというシームレスな体験をぜひご体験ください。
アプリダウンロードはこちらのリンクから👇
