October 6, 2025
MPマテリアルズ株 13%の急騰 レアアース規制影響

MPマテリアルズ株 13%の急騰 レアアース規制影響
先週10日、アメリカのレアアース採掘企業「MPマテリアルズ(MP Materials)」の株価が急激に上昇しました。中国がレアアース規制強化を発表し、対中関係に緊張が走ったことが発端となりました。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)レアアース事業 MPマテリアルズとは
注目が集まるMPマテリアルズ(MP)とはどのような企業なのでしょうか。
まず、最新の株価を見てみましょう。時間外で8.37パーセントの上昇をしており、注目が集まっていることがみて取れます。

MPマテリアルズ(MP)の過去1ヶ月の株価(2025年10月6日現在)/ woodstock.club
また、10人のアナリスト評価は「買い」となっています。(アナリスト評価は、特定の株式の取引を推奨するものではありません。)

MPマテリアルズの10人のアナリストによる評価 / woodstock.club
MPマテリアルズは、アメリカ・ネバダ州にある「マウンテンパス鉱山」を運営する企業で、主にレアアース(希土類)と呼ばれる重要鉱物を採掘・精製しています。レアアースは、たとえばスマートフォンの部品、自動車の電動モーター、風力発電、さらには軍用レーダーやミサイル誘導装置といった最先端の電子機器に欠かせない材料です。
特にアメリカにおいては、軍事産業や防衛技術にとって不可欠な資源であるため、経済だけでなく国家安全保障にも関わる、いわば「戦略資源」として扱われています。
そして注目すべきは、世界のレアアース供給の70%以上を中国が握っているという点です。しかも、採掘だけでなく精製や加工といった中流工程の大半を中国が独占しているため、アメリカやその他の先進国にとって、中国への依存度は極めて高いのです。
こうした背景の中、MPマテリアルズは「レアアースを自国で賄う」ための唯一の希望として、米政府からも大きな支援を受けています。今年の7月には米国防総省が同社に対して4億ドル(約600億円)を投資し、さらに今後のレアアース製品について一定の価格での買い取りを約束するなど、極めて厚い支援体制が取られました。
このようにMPマテリアルズは単なる鉱山企業にとどまらず、米国の経済的・軍事的自立を支える戦略企業としての立場を築いています。
きっかけは中国のレアアース規制
そんなMPマテリアルズの株価急騰の直接の引き金となったのは、先週発表された中国のレアアース輸出規制の強化です。
中国商務省は10月9日、外国企業が中国からレアアース製品を輸出する際、新たにライセンス取得を義務づける制度を導入すると発表しました。これにより、アメリカや他国の企業が中国で加工されたレアアースを手に入れることが、これまでよりも難しくなることが予想されます。
この措置に対して、アメリカのトランプ大統領は10日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「中国はとても敵対的だ」「世界を人質に取ろうとしている」と強く非難。

中国の輸出規制に対抗して、米国が中国に100%関税とソフトウェア輸出規制を課すと宣言した声明 / Truth Social
加えて、中国からの輸入品に対して100%の追加関税を課すこと、さらには中国の習近平国家主席との首脳会談のキャンセルの可能性まで示唆しました。
このように、米中関係は再び緊張状態に突入。市場では、「貿易戦争の再来か」との警戒感が広がりました。
S&P500などの主要株価指数は最大2.7%の下落を記録し、市場全体が不安定な様子を見せました。
MPマテリアルズ株は13%の大幅上昇
一方で、地政学的リスクが高まる局面で需要が増す資源関連株や、アメリカ国内で供給が完結する企業には買いが集中し、MPマテリアルズ株もその流れに乗りました。
中国がレアアースの輸出規制を強化したことで、世界中の企業がレアアースの調達に不安を抱きました。特にアメリカ企業にとっては、中国からの供給が断たれた場合の代替手段が必要になります。そんな中、国内でレアアースを採掘・供給できるMPマテリアルズの存在価値が一気に高まったということです。
さらに、アメリカ国内で「重要資源を自国で確保すべきだ」という機運が高まっていることも、同社にとって追い風です。
金やウラン、半導体などの戦略物資を扱う企業の株価も、同様に堅調な動きを見せています。
レアアース規制の行方は?
中国のレアアース輸出規制は、すぐに全面施行されるわけではなく、実際に施行されるのは12月以降とされています。つまり、それまでの間に米中が何らかの合意や協議に至る可能性もあるということです。
米戦略国際問題研究所(CSIS)の専門家グレースリン・バスカラン氏は、今回の規制が単なる経済制裁ではなく、アメリカの防衛産業を明確に標的にした点に注目しています。これがトランプ政権の反発を招いているのは言うまでもなく、両国の交渉は難航することが予想されます。
ブルッキングス研究所の中国専門家ジョナサン・チン氏は、「習主席は今後の交渉で主導権を握るために動いている」と指摘し、中国側には痛みに耐える覚悟があると分析しています。つまり、中国はアメリカの報復措置をある程度想定した上で今回の規制を導入した可能性が高いのです。
懸念されるのは「サプライチェーンの寸断」
今回の騒動は単なる貿易摩擦にとどまらず、産業の根幹を揺るがす供給リスクを世界中に突きつけました。特に、電気自動車やスマート家電といった先端分野において、レアアースの安定供給は死活問題です。
米中対立がさらに激化すれば、フォードのように一時的に生産停止に追い込まれる企業も再び現れるかもしれません。そうした中で、MPマテリアルズのように「自国内で供給できる体制を持つ企業」の価値はこれまで以上に評価されるかもしれません。
トランプ大統領がは今後どのように対応していくのか。
米国市場に大きな影響をもたらすレアアース規制には今後も目が離せません。
参考文献
- Siu, Twinnie. 「中国、レアアースと関連技術の輸出制限強化へ-米中摩擦の火種再燃も」 Bloomberg.co.jp, 2025年10月9日。URL: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-09/T3UBBTGOYMTC00 Bloomberg.com
- Baptista, Eduardo. 「中国、レアアース規制報復巡り米を『偽善的』と非難 対抗措置示唆」 Reuters Japan, 2025年10月12日。URL: https://jp.reuters.com/markets/japan/YOMGLT5IQNM3JAJADSYM6WT2BU-2025-10-12/ Reuters Japan
- Afanasieva, Dasha; Wu, Debby; Eastland, Maggie. 「米中対立再燃で半導体供給網に一段の不透明感-企業は混乱に備え」 Bloomberg.co.jp, 2025年10月11日。URL: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-11/T3YDQ5GPFHS800